小学生でもわかる!「渡り鳥(わたりどり)のふしぎ」

渡り鳥のふしぎ

はじめに

秋の夕暮れ、公園で遊んでいるときや学校からの帰り道に、ふと空を見上げてみてください。鳥たちがきれいな「V」の字の列を作って、どこか遠くへ力強く飛んでいく姿を見かけたことはありませんか?また、春になると南の国からやってきて、家の軒先や駅のツバメの巣でせっせとヒナを育てる姿もおなじみですよね。

このように、季節の変わり目に決まった場所へ大移動する鳥たちのことを「渡り鳥」と呼びます。

渡り鳥たちが旅する距離は、短い鳥でも数百キロ、長い鳥になると何千キロ、時には地球を半周して1万キロ以上にも及びます。人間ならパスポートを持って飛行機に乗ったり、スマホのマップやGPSで道を確認しながらでないと絶対にたどり着けない距離です。

それなのに、小さな鳥たちは迷子にもならず、毎年ピタリと同じ目的地へとたどり着きます。いったいどうやって方角を知り、どうやって過酷な長旅を乗り切っているのでしょうか?今回は、知れば知るほどワクワクする渡り鳥の驚くべきひみつを一緒にのぞいてみましょう!

はると
はると
空を見上げたら、鳥たちがすっげえ速さで飛んでいくのを見たぜ!何千キロも飛ぶなんて、フルマラソンどころじゃないよな。ツバメなんて1円玉20枚分(たった20グラム)くらいしかないのに、海の上で疲れて落っこちたりしないのか?
ひまり
ひまり
ふふ、小さな体なのに本当に力強いわよね。でもね、はると。渡り鳥たちが海を越えて旅ができるのは、体力だけじゃなくて、人間もびっくりするようなすごい「知恵」や「体の仕組み」があるからなのよ。

渡り鳥ってどんな鳥?旅をする理由と4つのグループ

そもそも、なぜ鳥たちはわざわざ命がけの危険をおかしてまで、遠い場所へと旅をするのでしょうか?ずっと同じ場所で暮らしていたほうが、安全で楽なはずですよね。

鳥たちが命がけの大移動をするのには、生き残るための「2つの大きな理由」があります。

  1. エサをたっぷり食べるため:秋から冬になると、寒さで虫が隠れてしまったり、池や川の水面が凍りついたりして、エサがまったく手に入らなくなります。そこで、暖かくてエサがたくさんある南の地域へ移動するのです。
  2. 安全にヒナを育てるため:春から夏にかけての北の地域(シベリアや日本の夏など)は、太陽が出ている時間が長く、植物が芽吹き、虫たちが爆発的に増えます。エサがたくさんあってヒナを安全に育てやすいため、わざわざ北へ戻って巣作りをするのです。

日本は海に囲まれ、四季の自然が豊かなため、世界でも有数の「渡り鳥の交差点」になっています。日本で見られる鳥たちは、移動のパターンによって大きく4つのグループに分けることができます。

春〜夏にやってくる「夏鳥」
代表例:ツバメ、キビタキ、オオヨシキリ
動き:春にフィリピンやインドネシアなど暖かい南の国から日本へやってきて、虫をたくさん食べて子育てをし、秋になると再び南へ帰っていく!
秋〜冬にやってくる「冬鳥」
代表例:ハクチョウ、マガモ、マガン、ユリカモメ
動き:秋になるとシベリアなど極寒の北の国から寒さを逃れて日本へやってきて、春まで湖や川でエサを食べながら冬を過ごす!

この2大グループに加えて、北の繁殖地と南の越冬地を行き来する途中で、エネルギー補給のために日本にちょこんと立ち寄る「旅鳥(シギやチドリなど)」や、季節が変わってもどこへも行かず一年中同じ地域で暮らす「留鳥(スズメ、カラス、トビなど)」がいます。身近な鳥たちも、実はみんな違う生き方をしているのですね。

はると
はると
スズメやカラスはずっと日本にいる「留鳥」で、ツバメやハクチョウは季節ごとに引っ越しする「渡り鳥」なんだな!南の国から海を越えて日本に子育てに来るなんて、ツバメの根性は半端じゃないぜ!
ひまり
ひまり
本当にそうね。体重がたった20グラムくらいしかないツバメが、何千キロもの海を渡りきって去年と同じ軒先に戻ってくるなんて、奇跡みたいだと思わない?ちなみにツバメが駅や人の家の玄関に巣を作るのは、天敵のカラスが人間を怖がって近寄れないからなの。人間を「ボディーガード」にしてヒナを守っているのよ。
春になると南の国から海を越えてやってくるツバメ
▲ 春になると南の国から海を越えてやってくるツバメ(出典: Wikimedia Commons)

なぜ迷わないの?驚きの「4つの体内コンパス」

鳥たちが旅をするとき、空には道路標識もなければ、スマホのナビ画面もありません。それなのに、昼も夜も迷わずに海を渡り、目的地へピタリと着地できるのはなぜでしょうか?

実は、渡り鳥の体の中には、地球や宇宙の力を利用した「4つの超高性能コンパス」が生まれつき備わっています。

  1. 太陽コンパスと体内時計:昼間に飛ぶ鳥たちは、太陽の位置を目印にして方角を知ります。でも、太陽は東から南を通って西へと一日中動いていますよね。そこで鳥たちは、自分の体の中にある正確な「体内時計」を使って、「今が朝の9時で太陽があの位置にあるから、あっちが南だな」と頭の中で瞬時に計算しながら飛んでいるのです。
  2. 夜空の星座コンパス:タカなどの天敵に襲われないよう、小鳥たちの多くは涼しい夜に飛びます。夜には太陽がありませんが、なんと彼らは「星空」を見ています!特に、北の空で動かない北極星を中心にして、星たちがグルグルと回るパターンをヒナのころに覚え、北の方角を正確に見つけ出します。
  3. 地球の磁石を感じる地磁気コンパス:曇りや雨の日で太陽も星も見えないときはどうするのでしょうか?実は地球全体は巨大な磁石になっていて、北極と南極をつなぐ見えない力(磁場)が流れています。渡り鳥の目の中には特別なタンパク質があり、なんと地球の磁場が「光」や「影」の模様として視界に見えていると考えられています。目に見える磁石の線に沿って飛べば、どんな暗闇でも決して迷いません。
  4. 地形の景色とにおいの記憶:目的地が近づいてくると、大きな山脈や川、海岸線の形などの目印(ランドマーク)を目で見分けます。さらに驚くことに、海の上を飛ぶ鳥などは、風に乗って漂ってくる潮の香りや島のにおいまで使って、ピンポイントで自分の巣の場所を特定しているのです。
ハイテクを超える鳥たちの4大ナビゲーション!
1太陽コンパス:太陽の角度と体内時計を連動させて正確な方角を割り出す!
2星座コンパス:北極星を中心に回る夜空の星の並びを見て方角を知る!
3地磁気コンパス:地球の磁力を目の特別なタンパク質で「光」として感じる!
4ランドマークとにおい:山や川の形、独特のにおいを記憶してゴールへ直行する!

これら4つのナビを天気や時間帯に合わせて切り替えたり組み合わせたりしているからこそ、鳥たちは何千キロ離れた目的地にも迷わずたどり着けるのです。

はると
はると
地球の磁石の力が見えるなんて、まるでSFアニメの特殊能力みたいでかっこいいぜ!太陽も星も磁石も使いこなすなんて、プロのパイロット以上じゃん!
ひまり
ひまり
ふふ、本当にすごいわよね。曇って星が見えない夜でも迷わないのはどうしてだろうってずっと不思議だったけれど、目の中に磁石を感じるセンサーがあるなんて驚きだわ。
太陽や星や地球の磁場を感じて飛ぶ渡り鳥の体内コンパス

なぜ「V字」で飛ぶの?チームプレイの省エネ飛行

秋の空を群れで渡っていくハクチョウやマガンを見ていると、きれいなアルファベットの「V」の形になって飛んでいることがよくあります。バラバラに飛んだり、一列に並んだりするのではなく、なぜ決まってV字になるのでしょうか?

実はこのV字の隊列は、みんなで協力して体力を温存するための「究極の省エネ飛行術」なのです。

鳥が大きな翼を力強く羽ばたかせると、翼の先から外側の上に向かってクルクルと空気の渦が巻き起り、上向きの風(上昇気流)が発生します。 斜め後ろを飛ぶ鳥は、前の鳥が作ってくれたこの「上向きの風」に翼を乗せることで、まるで「空気の波に乗るサーフィン」のように、自分で強く羽ばたかなくてもフワリと体が浮き上がります。

研究によると、V字編隊を組んで飛ぶことで、1羽だけで飛ぶときと比べて体力の消費を最大で20〜30パーセントも節約できることが分かっています。心拍数も低く抑えられ、長距離を楽に飛び続けることができるのです。

しかし、ここでひとつ疑問が湧きますよね。「それじゃあ、一番前を飛ぶ先頭の鳥は、前の風を使えないから損じゃないの?」

もちろん、先頭を飛ぶ鳥は一番風の抵抗を受けるため、とても疲れます。そこで鳥たちは、素晴らしい「チームプレイ」を行います。

自転車ロードレースやサッカーと同じ「助け合い」!
自転車の長距離レースで選手たちが一列になり、先頭を交代しながら風よけを作って走るのを見たことはありませんか?渡り鳥のV字飛行もまったく同じです。先頭の鳥が疲れてくると、自然と列の後ろへ下がり、後ろにいた元気な鳥がスッと前に出て交代します。お互いに鳴き声を掛け合って励まし合いながら、全員で助け合ってゴールを目指しているのです!

仲間への思いやりと見事な連係プレーがあるからこそ、厳しい空の旅を全員で乗り切ることができるのですね。

はると
はると
なるほど!サッカーでも全員でパスを回して助け合うけれど、鳥たちも先頭を交代しながらチームプレイで飛んでいたんだな。一人占めしないで助け合うなんて熱いぜ!
ひまり
ひまり
ええ、誰か一羽だけに無理をさせない素敵な助け合いよね。……そういえばはると、体育のマラソンのとき、いつも足の速いケンタの後ろにぴったりくっついて風よけにしてない?鳥たちを見習って、たまには先頭を走りなさいよね!
大空を美しい隊列を組んで飛ぶ渡り鳥の群れ
▲ 大空を美しい隊列を組んで飛ぶ渡り鳥の群れ(出典: Wikimedia Commons)

渡り鳥を守るために私たちにできることは?

何千キロ、時には1万キロ以上もの長い旅を続ける渡り鳥たち。しかし、彼らは休むことなく飛び続けられるわけではありません。

人間が長距離ドライブをするときに高速道路のサービスエリアで休憩するように、渡り鳥たちにも羽を休めてお腹いっぱいエサを食べる「中継地」が必要です。

特に、川の河口にある干潟や湿地、湖などは、カニや小魚、貝、水草といった栄養満点のエサがたっぷりある、命のオアシスです。世界中でも、こうした渡り鳥の大切な湿地を守るために「ラムサール条約」という国際的な約束を結んで自然を保護しています。

ところが現在、人間の暮らしが便利になる一方で、干潟が埋め立てられて工場や街になったり、海や川にプラスチックごみが流れたりして、鳥たちが安心して休める場所が世界中で減ってしまっています。中継地がひとつ失われるだけでも、力尽きて旅を続けられなくなる鳥たちがたくさんいるのです。

では、渡り鳥たちを守るために、私たちにはどんなことができるでしょうか?

Q. 渡り鳥を観察するときに気をつけるマナーはある?
A. 鳥たちを驚かせないよう、静かに離れた場所から観察しよう!長い旅でヘトヘトに疲れている鳥たちを追いかけ回したり、お菓子などの人間の食べ物をあげたりしないことが何よりの優しさだよ。

身近な自然をきれいに保つこと(ゴミをポイ捨てしないことや、プラスチックを減らす工夫)はもちろん、まずは身近な水辺や公園にやってくる鳥たちに興味を持つことが大切です。秋や冬になったら、双眼鏡や図鑑を持って近所の池や川原へバードウォッチングに出かけてみましょう。「遠いシベリアからよく無事に来てくれたね」と温かく迎える気持ちが、自然と地球を守る大きな第一歩になります。

はると
はると
何千キロも飛んできたのに、休む場所がゴミだらけだったりなくなっていたら悲しすぎるよな。俺も今度の週末、双眼鏡を持って近くの川原にカモやハクチョウを探しに行ってみるぜ!
ひまり
ひまり
いい考えね、はると!遠くの国から海を越えてやってきた命だと思うと、近所の鳥たちを見る目がガラリと変わるわよね。静かに見守りながら応援しましょうね。
干潟でエサを探して羽を休める渡り鳥のシギ
▲ 干潟でエサを探して羽を休める渡り鳥のシギ(出典: Wikimedia Commons)

まとめ

📝 今日のまとめノート
1 旅をする理由:寒さやエサ不足から逃れ、安全に子育てをするために決まった季節に大移動する!
2 4つのグループ:夏鳥(ツバメなど)、冬鳥(ハクチョウなど)、旅鳥(シギなど)、留鳥(スズメなど)がいる!
3 迷わないひみつ:太陽、星、地球の磁力、地形を組み合わせた「4つの体内コンパス」を使いこなす!
4 V字飛行の省エネ:前の鳥の上昇気流に乗って体力を20〜30%節約し、先頭を交代しながらチームで飛ぶ!
5 渡り鳥を守る:干潟や湿地などのオアシスを大切にし、身近な渡り鳥を温かく観察しよう!
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はると
はると
渡り鳥のハイテクな体内ナビにもびっくりしたけれど、先頭を交代しながら助け合って飛ぶV字飛行には本当に感動したぜ!俺たちのサッカーチームも見習って、パスを回して助け合わなきゃな!
ひまり
ひまり
ふふ、チームワークのお手本ね!空を見上げた時に渡り鳥たちの姿を見つけたら、どんな遠い旅をしてきたのか想像しながら、優しくエールを送ってあげましょうね。
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