はじめに
夜空を見上げたとき、ふだん見るチカチカとまたたく星とはちがって、フワッとした光の筋をサーッと引いて静かに輝く天体を見たことがあるでしょうか。 昔から「ほうき星」とも呼ばれてきたこの天体こそが、「彗星」です。
でも、「彗星」と聞くと、「あれ? 太陽のまわりを回っている『水星』と同じ仲間?」「一瞬で夜空を横切る『流れ星』と何がちがうの?」とギモンに思う人も多いはずです。
実は、彗星の正体は、私たちが想像するような硬い岩の星ではなく、太陽系の果てで作られた「巨大な汚れた雪だるま」なのです!
どうして宇宙を飛ぶ雪だるまから、あんなにきれいな「しっぽ」が伸びるのでしょうか? そして、夏や冬の夜空を彩る「流星群」とも驚きの深いつながりがあるって本当でしょうか?
今回は、夜空をダイナミックに駆け抜ける「彗星」の不思議なヒミツを、ワクワクしながらひも解いていきましょう!
彗星って、水星の親戚か何かか? それとも、すっげー長い流れ星のことなのかな!
ふふ、名前の響きはそっくりだけど、水星とは全然ちがう天体なのよ。なんと、宇宙の奥深くからやってくる「氷と雪の塊」なんですって!
彗星ってどんな天体?「宇宙の雪だるま」の正体
彗星の写真を望遠鏡で見ると、青白く幻想的な光を放っていて、まるで宇宙に浮かぶ宝石のように見えますよね。 でも、その本体の本当の姿は、とても意外なものです。
天文学者たちは、彗星のことを親しみを込めて「汚れた雪だるま(ダーティー・スノーボール)」と呼びます。
なぜそんな名前がついたのでしょうか? その理由は、彗星を作っている成分にあります。 彗星の本体は、「たっぷりの氷」と「岩石のチリや砂」が混ざり合ってギュッと固まったものだからです。
しかも、その氷は私たちがジュースに入れる普通の水の氷だけではありません。
- 水の氷
- 二酸化炭素が凍ったドライアイス
- メタンや一酸化炭素、アンモニアが凍ったもの
こうしたガスや水が、宇宙の凍てつく寒さでカチコチに凍りつき、そこに宇宙を漂う黒っぽいチリや岩くずが混ざっています。 まるで、校庭の砂場で泥や砂をたくさん巻き込みながら作った、黒っぽくてゴツゴツした雪だるまそっくりなのです。
彗星はふだん、太陽から遠く遠く離れた、太陽系のいちばん外側にある極寒のエリア(「オールトの雲」や「カイパーベルト」と呼ばれる氷の天体のふるさと)で静かに眠っています。 そこは太陽の光がほとんど届かないマイナス200度以下の世界です。だからこそ、氷が何十億年も溶けずに残っているのですね。
ところが、近くを通った星の重力などでバランスが崩れると、彗星は何万年、何億年という気の遠くなる時間をかけて、太陽に向かってスーッと引き寄せられていきます。
ここで、名前がそっくりでよくカン違いされる「水星」と比べてみましょう。
太陽のいちばん近くを回る「水星」
太陽系第1
惑星で、
太陽のすぐそばを
回っている!
岩石と
金属でできた、
硬くて
熱い
丸い
星!
しっぽはなく、
形はずっと
丸いまま
変わらない!
太陽系の
遠い
果てからはるばるやってくる
小さな
天体!
氷やドライアイス、チリが
固まった「
雪だるま」!
太陽に
近づくと
氷が
溶けて、
長〜いしっぽを
伸ばす!
へえー! 名前はどっちも「すいせい」だけど、カチカチの熱い惑星と、冷たい雪だるまで全然ちがうんだな!
そうなの。太陽系のはるか遠く、マイナス200度を超える極寒の世界で作られたからこそ、氷が何十億年も溶けずに残っているのね。
▲ 探査機ロゼッタが接近撮影した彗星の核の実写写真(出典: Wikimedia Commons)
なぜ長い「しっぽ」ができるの?太陽と反対にのびるふしぎ
彗星といえば、誰もが思い浮かべるのが夜空をたなびく美しい「しっぽ」ですよね。 でも、宇宙の遠くにいるときの彗星は、しっぽのないただの黒っぽい塊です。 では、なぜ太陽に近づくと、あんなに長くて立派なしっぽが現れるのでしょうか?
彗星の3つのパーツを知ろう
彗星が太陽に近づいて温められると、姿が大きく変化して3つの部分に分かれます。
- 核:中心にある氷とチリの本体です。大きさは数キロメートルから数十キロメートルほどで、天体としては意外とコンパクトです。
- コマ:太陽の熱で核の表面の氷がジュワッと蒸発し、ガスやチリとなって核のまわりをフワッと包み込んだ巨大な雲です。コマの大きさは、地球よりも大きくなることがあります!
- 尾(しっぽ):コマから宇宙空間へ吹き飛ばされたガスやチリが、何千万キロメートル、ときには1億キロメートル以上も長く宇宙に伸びたものです。
しっぽは進行方向の後ろじゃない!?
ここで、びっくりする事実を紹介しましょう! 彗星がものすごいスピードで宇宙を飛んでいるとき、しっぽはどの方向に伸びていると思いますか?
「ロケットの煙や、走っている人の髪の毛みたいに、後ろになびいているんじゃないの?」と思いますよね。 実はこれ、大間違いなのです!
彗星のしっぽは、「彗星が飛んでいる向きとは関係なく、常に太陽と反対の方向」へ向かって伸びています。 ですから、彗星が太陽のまわりをぐるっと回って、太陽から遠ざかるように進んでいるときは、なんと「自分のしっぽを前に突き出して、しっぽの方向に進んでいく」のです!
Q. どうして太陽と反対側にしっぽが伸びるの?
A. 太陽からは、光だけでなく「太陽風」という電気を帯びた目に見えない粒の嵐が、ものすごいスピードで外側に向かって吹き荒れています。彗星から吹き出したガスやチリがこの猛烈な風に吹き流されるため、扇風機の前にリボンをかざした時のように、必ず太陽と反対側へなびいてしまうのです!
太陽という巨大な扇風機から強烈な風が吹き付けているからこそ、あの美しいしっぽができるのですね。
えっ! しっぽって進行方向の後ろになびくんじゃないのか!? 太陽の風に吹き飛ばされて、しっぽを前にして飛ぶこともあるなんて、太陽のパワーってすげーんだな!
強い風の中で前を向いて走っても、リボンは風に押されて後ろになびいちゃうのと同じ原理ね。宇宙の風が目に見えるみたいで、とっても不思議だわ!
流星群の正体は彗星の落とし物?夜空をかける秘密
夏休みの「ペルセウス座流星群」や、冬休みの「ふたご座流星群」など、夜空を無数の星がサーッと流れる「流星群」を見たことがありますか? 「たくさん願い事をしよう!」とワクワクする流星群ですが、実はこの流れ星たちの正体も、彗星と深いつながりがあるのです。
宇宙の通り道に残された「チリの川」
彗星が太陽に近づいてしっぽをなびかせるとき、氷が蒸発するのと一緒に、たくさんのチリや小石が宇宙空間にパラパラとばらまかれます。 彗星本体が遠くへ飛び去ったあとも、彗星が通った道(軌道)には、まき散らされたチリの粒が無数に残り、まるで宇宙に浮かぶ「チリの帯」のようになります。
そして、地球が太陽のまわりを回る途中で、この「チリがたくさん漂っているエリア」を通り抜ける瞬間がやってきます!
チリが地球の大気に飛び込んでピカッと光る!
地球が猛スピードでそのチリの帯に突っ込むと、彗星が落としていった砂粒やチリが、時速数十万キロメートルという猛スピードで地球の大気(空気)に飛び込んできます。
すると、チリと大気が激しくぶつかり合って超高温になり、チリや周りの空気が一瞬だけピカッとまばゆく光ります。 これこそが、私たちが地上から見る「流れ星(流星)」の正体なのです!
- 彗星がチリをばらまく:太陽に近づいた彗星が、軌道の上にたくさんのチリを落としていく。
- 地球がチリの帯に突っ込む:地球が太陽を回る通り道とチリの帯が交差する。
- チリが大気と衝突して光る:激しい摩擦熱でチリが光り、無数の「流れ星」となって夜空に降り注ぐ!
地球は毎年同じ時期に同じ場所を通過するため、毎年決まった時期にたくさんの流れ星が見られます。 私たちが夜空を見上げて感動する流星群は、大昔に彗星が宇宙に残していった「ロマンチックな置きみやげ」だったのですね!
俺たちがお願いごとをする流れ星が、彗星が落としていったチリだったなんて知らなかったよ! まるで宇宙の忘れ物の中を地球がくぐり抜けてるみたいだな!
何十年も何百年も前に彗星が通り過ぎた跡を、地球が毎年決まった日に通るなんて神秘的よね。次に流星群を見るときは、遠い彗星の姿を思い浮かべちゃいそう!
一生に一度のチャンス?有名なハレー彗星と未来の空
これまで何千個もの彗星が見つかっていますが、その中でも世界でいちばん有名と言えるのが「ハレー彗星」です。
76年に一度だけ戻ってくる大スター
ハレー彗星は、およそ76年に一度のペースで地球や太陽の近くに戻ってくる定期便のような彗星です。 イギリスの天文学者エドモンド・ハレーが、過去の彗星の記録を調べて「1531年、1607年、1682年に現れた彗星は、全部同じひとつの彗星だ! 次は1758年に戻ってくるはずだ!」と大予言し、見事に的中させたことからこの名前がつきました。
人間の寿命と同じくらいの周期でしか地球に近づかないため、ふつうは一生に一度しか見ることができない特別な彗星です。 前回ハレー彗星がやってきたのは1986年。世界中で大ブームが起き、多くの人たちが望遠鏡を持って夜空を見上げました。
次に見られるのはいつ?
では、次にハレー彗星が地球にやってくるのはいつでしょうか? 計算によると、次回は【2061年の夏】です!
「2061年なんて、すごく遠い未来だなあ」と思うかもしれません。 でも、いま小学生のみんななら、2061年には40代後半から50歳くらい。 つまり、大人になったみんなには、自分の目で本物のハレー彗星を見る大チャンスが待っているのです!
彗星は、太陽系が生まれたおよそ46億年前の氷やチリがそのまま冷凍保存されている「太陽系のタイムカプセル」でもあります。 ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ロゼッタ」が彗星を追いかけてすぐそばまで行き、小さな着陸機「フィラエ」を彗星の核に着陸させて岩やガスの成分を詳しく調査したのも、地球や命がどうやって誕生したかを探るためでした。
2061年の夏、夜空に大きくしっぽを引いたハレー彗星が現れるとき、あなたは何をしているでしょうか? 未来の自分を想像しながら夜空を眺めると、宇宙がもっと身近に感じられますね!
2061年か! 俺はそのとき、サッカーのコーチになって子どもたちに教えてるかな。みんなでグラウンドに寝転がってハレー彗星を見上げるぞ!
ふふ、素敵な夢ね! 私は立派な看護師さんになって、たくさんの人を笑顔にできていたらいいな。大人になっても、また一緒に夜空を見上げたいわね!
▲ ハレー彗星の周期を発見した天文学者エドモンド・ハレー(出典: Wikimedia Commons)
まとめ
📝 今日のまとめノート
1
彗星は「汚れた雪だるま」:氷やドライアイス、岩石のチリが混ざって固まった冷たい小天体!
2
しっぽは太陽と反対側に伸びる:太陽の熱で溶けたガスやチリが、強烈な「太陽風」に吹き流される!
3
流星群は彗星の置きみやげ:彗星が軌道上に残したチリの帯に地球が突っ込むことで、無数の流れ星が光る!
4
ハレー彗星は2061年に再接近:約76年周期で回る大スター!大人になったみんなに観察の大チャンス!
🖍️ ✏️
彗星って、ただの光る星じゃなくて、氷の雪だるまだったり流星群の正体だったり、すっげー面白かったな! 2061年のハレー彗星、絶対に忘れないぞ!
太陽系の果てから何億年もかけて太陽のそばまでやってくるなんて、本当にロマンがあるわよね。今夜は窓から、遠い宇宙の雪だるまに思いを馳せて星空を眺めてみましょう!
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