はじめに
青く澄みわたる空に向かって、まっすぐにそびえ立つ真っ白な巨大な塔。 発射場に響きわたるカウントダウンの音声。 「3、2、1……点火!」
次の瞬間、地面を揺らすほどの地響きとごう音がとどろき、ロケットのおしりからまぶしいオレンジ色の炎と真っ白な煙が一気に噴き出します。巨大な機体はゆっくりと、しかし確実に浮き上がり、やがて猛烈なスピードで大空の彼方へと吸い込まれていきます。
テレビのニュースや動画でロケットの打ち上げシーンを見て、胸がドキドキしたことがある人も多いのではないでしょうか。
あのロケット、実は高さがビル20階分(50〜60メートル以上!)もあり、重さはなんとジャンボジェット機何機分にもなる数百トンもあります。あんなに重くて巨大な金属のかたまりが、地球の重力に逆らって宇宙まで飛び出していけるなんて、とても不思議ですよね。
空を飛ぶ乗り物といえば「飛行機」もありますが、なぜ飛行機では宇宙へ行けないのでしょうか? もしジャンボジェット機に乗って「このまま宇宙まで行っちゃおう!」と上へ上へ飛び続けたらどうなると思いますか?実は途中で空気が薄くなってエンジンが止まり、宇宙に届く前に真っ逆さまに落ちてきてしまうのです!
では、空気のない宇宙空間をロケットはどうやって飛んでいるのでしょうか?
今回は、ロケットが宇宙へ飛び立てる科学のひみつを、身近な実験や分かりやすいたとえ話を通して、一緒に楽しく解き明かしていきましょう!
俺、テレビでロケットの発射を見たとき、ものすごい地響きで鳥肌が立ったよ!あんなに重いのに、どうして宇宙まで飛んでいけるんだ?
ふふ、本当に大迫力よね。実は、学校の理科で習うことや身近な道具の仕組みと深いつながりがあるのよ。一緒に調べてみましょう!
なぜ宇宙へ行けるの?ロケットが飛ぶ「風船の力」
まず、私たちがよく知っている「飛行機」と「ロケット」の飛び方の違いについて考えてみましょう。
飛行機は、機体の横についている大きな「翼」を使って飛んでいます。前に進むことで翼の上下に空気の流れが生まれ、機体をふわっと空中に浮かび上がらせる力(揚力)が発生します。つまり、飛行機が飛ぶためには絶対に「空気」が必要なのです。
しかし、地上から100キロメートル以上離れた宇宙空間には、「空気がまったくありません」。空気がなければ翼で浮かぶこともできないため、どんなにエンジンのパワーを上げても、飛行機は宇宙へ行くことができないのです。
風船の口をパッと離すとどうなる?
空気がまったくない宇宙で、ロケットはどうやって前に進んでいるのでしょうか? その答えを教えてくれるのが、「空気を入れたゴム風船」です。
ゴム風船をパンパンにふくらませて、口を結ばずに指をパッと離してみてください。 すると、「ピューッ!」と激しい音を立てて、中の空気が後ろから勢いよく噴き出しますよね。そして風船本体は、空気が吹き出た向きとは「反対の方向」へビュンビュン勢いよく飛んでいくはずです。
ロケットが宇宙へ飛ぶ原理も、これとまったく同じです! ロケットはおしりのエンジンから、ガス(気体)をものすごいスピードで後ろへ吹き飛ばしています。すると、その反対方向に向かってロケット本体がぐんぐんと力強く押し出されるのです。
プールの壁をキックするのと同じ「作用・反作用」
理科では、この力を「作用・反作用の法則」と呼びます。 難しい名前に聞こえますが、プールで泳ぐときのことを思い浮かべるとすぐに分かります。
プールの端っこで、壁に足をつけて力いっぱいグッと蹴ると、体が一気にスーッと前に進みますよね。 自分が壁を後ろへ押した(作用)のと同じ強さの力で、壁が自分の体を前へ押し返してくれた(反作用)のです。
ロケットも同じように、大量のガスを後ろへ力いっぱい蹴っ飛ばすことで、自分自身を宇宙へ押し上げています。周りに空気がなくても、後ろへ何かを勢いよく投げ出しさえすれば進むことができるのです。
周りの
空気を
翼に
当てて
浮かび
上がる!
空気がまったくない
宇宙空間では
飛べない。
後ろへガスを
噴き
出す
反動(
押し
返す
力)で
進む!
空気がまったくない
宇宙空間でもスイスイ
進める。
風船から
空気が
抜けて
飛ぶのと
同じ
仕組み!
プールの壁をキックするのと同じか!サッカーのシュートでも、芝生を強く踏み込むほど強いキックが打てるもんな!
その通りね、はると!何かを後ろに強く押し出すと、同じ力で前に進めるの。これがロケットが進む基本の力なのよ。
酸素のない宇宙を飛べる秘密!「燃料」と「酸化剤」
ロケットがガスを噴き出す力で飛ぶことは分かりました。 でも、ここで新たな疑問が浮かんできます。
「ガスを噴き出すための炎は、どうやって燃やしているの?」
小学校の理科の授業で習う「物が燃える3つの条件」を思い出してみましょう。
- 燃えるもの(燃料)
- 熱(高い温度)
- 酸素
この3つがそろわないと、火は絶対に燃えません。 バーベキューで木炭を燃やすとき、うちわでパタパタとあおいで風を送ると、炎がボッと勢いよく燃え上がりますよね。空気の中にある「酸素」をたくさん届けているからです。 自動車や飛行機のエンジンも、周りの空気から酸素を吸い込んでガソリンを燃やしています。
ところが、宇宙には空気がありません。つまり、「酸素がゼロ」の世界です! それなのに、なぜロケットのエンジンは宇宙でも消えることなく、激しい炎を噴き出し続けられるのでしょうか?
秘密は「酸素もぜんぶ自分で持っていく」こと!
その答えは、とてもシンプルで豪快な工夫にありました。 なんとロケットは、「燃やすための酸素も自分でタンクに詰めて宇宙へ持っていく」のです!
ロケットの胴体の中には、燃やすための「燃料(液体水素や特別な油など)」が入ったタンクのほかに、「酸化剤(気体の酸素をマイナス183度まで冷やして液体にした液体酸素)」のタンクがぎっしり積まれています。
海の中を泳ぐダイバーさんが、水中で息をするために背中に空気ボンベを背負って潜るのと同じです。 「周りに酸素がないなら、自分で背負って持っていけばいい!」というわけですね。
ロケットのエンジンの中では、この燃料と酸化剤が出合い、ものすごい勢いで混ざり合って燃焼します。だから、空気のない真っ暗な宇宙空間でも、太陽のように激しい炎を噴き出し続けることができるのです。
Q. 宇宙で普通の火をつけるとどうなるの?
A. マッチやライターを宇宙空間(空気のない場所)で擦っても、火はつきません。火が燃え続けるには酸素が必要だからです。ロケットはエンジンの中に自分で持ってきた酸素を直接送り込んでいるから、宇宙でも元気に燃え続けられるんだよ!
酸素がないなら自分で持っていけばいいって、めちゃくちゃ力技だけど頭いいな!
ふふ、ダイバーさんの酸素ボンベと同じ発想よね。ロケットの中身のほとんどは、この燃料と酸素で占められているのよ。
スピードアップの秘密!「ロケットの切り離し」
ロケットが宇宙へ行くためには、もうひとつ絶対に越えなければならない大きな壁があります。 それが、地球の「重力」です。
地球はとても強い力で、地上のすべてのものを地面に向かって引っ張っています。私たちがジャンプしてもすぐに地面に着地してしまうのは、この重力があるからです。
この重力を振り切って宇宙へ飛び出し、地球の周りを落ちずに回り続けるためには、信じられないほどの猛スピードを出さなければなりません。 そのスピードは、なんと「秒速約7.9キロメートル(時速約2万8000キロメートル!)」!
これは「第1宇宙速度」と呼ばれるスピードで、新幹線の約100倍、音の速さの23倍(マッハ23)という想像を絶する超スピードです。東京から大阪まで、たったの1分ほどで着いてしまう速さです。
ロケットの体重の90%は燃料!
これほどの猛スピードを出すためには、とてつもないパワーと大量の燃料が必要です。 なんと、発射台に立っているときのロケット全体の重さのうち、約90%が燃料と酸素の重さなのです! もし体重30キロの君がロケットだとしたら、荷物と水筒だけで27キロ!君の体本体はたった3キロしかないようなものです。 ロケット本体の金属の重さやエンジン、てっぺんに載せている人工衛星の重さは、全部合わせても全体のたった10%しかありません。
ここで、ひとつの大きな問題が生まれます。 「燃料をたくさん積めば積むほど、ロケット全体が重くなってスピードが出にくくなる」ということです。 重い荷物をパンパンに背負ったままでは、速く走ることはできませんよね。
走る途中でリュックを捨てる「多段ロケット」
そこで考え出された素晴らしい知恵が、「ロケットの切り離し(多段式)」です。
たとえば、遠くへ走るマラソン大会を想像してみてください。 重い荷物を背負って走り出し、途中で中身を飲んで空っぽになった水筒やリュックを「ポイッ」と捨てていけば、体がどんどん軽くなって、後半になればなるほどスピードを上げることができますよね。
ロケットもまったく同じことをしています! ロケットは何段かに分かれて作られていて、燃料を使いきった下半身の巨大なタンクを、途中で次々と切り離して捨てていきます。身軽になったところで次のエンジンに点火し、さらに加速していくのです。
STEP 1
超巨大パワーで打ち上げ!第1段ロケット点火
地面の重力を振り切るため、一番大きくて力持ちの「第1段エンジン」に点火!全身の力をふりしぼって空高く舞い上がります。
STEP 2
空っぽのタンクを切り離して身軽に変身!
燃料を使いきって空っぽになった重い第1段タンクを海の上で切り離します。身軽になったところで「第2段エンジン」に点火し、一気に猛スピードへ加速!
STEP 3
宇宙へ到達!大切な荷物を宇宙へ届ける
ついに宇宙へ到着!てっぺんに積んでいた人工衛星や宇宙船を静かに切り離し、目的の軌道へと正確に送り届けます。
東京から大阪まで1分って、速すぎて想像もつかないぜ!空っぽになったタンクを切り離して軽くなるなんて、ゲームのパワーアップみたいだな!
ふふ、無駄な重さをどんどん手放していくことで、あのものすごいスピードを出せるのね。世界中の科学者たちの知恵の結晶だわ。
日本の誇る新しいロケット「H3」と未来の宇宙旅行
ここまでロケットの仕組みを見てきましたが、実は日本は、世界でもトップクラスの優れたロケット技術を持っている国なんです!
その代表が、2024年に打ち上げに成功した日本の新しい大型主力ロケット、「H3(エイチスリー)ロケット」です。
ロケットは宇宙へ届ける「頼もしい宅配便」!
ロケットの大切なお仕事は、ただ空高く宇宙へ飛んでいくだけではありません。 宇宙空間にさまざまな荷物を運ぶ「宇宙の大型トラック(宅配便)」の役割を果たしています。
たとえば、私たちが毎日テレビやスマートフォンで見ている天気予報のための「気象衛星ひまわり」や、地図アプリで現在地を教えてくれる「GPS衛星」、地球の環境を調べる人工衛星などを宇宙へ届けています。 さらに、宇宙飛行士たちが暮らす「国際宇宙ステーション(ISS)」へ、ごはんや水、実験の道具を届けるのもロケットの重要なお仕事です。
日本のH3ロケットは、これまでのロケットよりも重い荷物を宇宙へ運べるパワーを持ちながら、自動車の部品などをうまく使って、打ち上げ費用を半分近くまで安くすることに挑戦しています。費用が安くなれば、世界中から「日本のロケットに荷物を運んでほしい!」とたくさんの依頼が集まるようになります。
宇宙旅行が当たり前になる未来へ!
ロケットの技術は、これからもどんどん進化していきます。
いま世界中では、再び人間を月へ送り込む「アルテミス計画」という大きなプロジェクトが進んでいます。近い将来、日本人宇宙飛行士が月面に降り立ち、月の上を歩く日がやってきます。
さらに、使い終わったロケットを海へ捨てずに、地上へ垂直に着陸させて回収し、何度もキレイにして使い直す「再使用型ロケット」の開発も急速に進んでいます。 ロケットを何度も繰り返し使えるようになれば、打ち上げ費用がぐっと下がり、飛行機に乗って海外へ行くのと同じように、誰もが宇宙ホテルへ遊びに行ける時代が本当にやってくるかもしれません!
日本のH3ロケットってそんなにすごいんだな!将来、宇宙ホテルでサッカーの無重力リフティングをやってみたいぞ!
あはは、宇宙でサッカーなんて楽しそうね!でもはると、その前に「今日の宿題」っていう手ごわい重力を振り切るのが先じゃない?無重力だとどこまでもボールが飛んでいきそうだから、パスを出すのも大変そうだけどね。
▲ 日本の大型主力ロケット「H3」打ち上げの瞬間(出典: Wikimedia Commons)
まとめ:ロケットのしくみ 3つのポイント
📝 今日のまとめノート
1
飛ぶ力は「作用・反作用」:風船が空気を噴き出して飛ぶのと同じ!ガスを後ろへ勢いよく噴き出す反動で前へ進む。
2
宇宙でも燃える秘密は「酸化剤」:空気がなく酸素ゼロの宇宙を飛ぶため、燃料と一緒に液体酸素もタンクに積んで持っていく!
3
猛スピードの秘密は「多段切り離し」:燃料を使いきった重いタンクを途中で次々に切り離して身軽になることで、マッハ23の超スピードを出す!
🖍️ ✏️
ビルほど巨大で重いロケットが宇宙へ飛び出していけるのは、風船と同じ「作用・反作用」の力や、酸素を自分で背負って持っていく工夫、そして重いタンクを切り離して身軽になる知恵がぎっしり詰まっているからでした。
もしテレビでロケットの打ち上げを見たり、夜空を見上げたりすることがあったら、遠い宇宙で地球を見守っている人工衛星や、それを届けたロケットの科学の工夫をぜひ思い出してみてください。
いまこの記事を読んでいる君が大人になるころには、ロケットに乗って月や宇宙ステーションへ出かけることが、当たり前になっているかもしれませんよ!
風船を飛ばす実験なら今すぐ家でもできるな!俺、理科のテスト勉強は苦手だけど、ロケットの仕組みならバッチリ覚えたぜ!
ふふ、実験するのはいいけれど、散らかした風船はちゃんとお片付けするのよ。これからの宇宙開発がますます楽しみになったわね!
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